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2012年6月21日 (木)

雨の中のアナベル

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昨年、アジサイ好きの友人にもらった小さな枝。さし木が育って背丈は50㎝ばかりになった。小ぶりの花をつけ、ガクが開いてきた。ぜんぶ開いたときを逃さず撮ろうと毎日見ている。今日の昼間に撮った一枚。けっこうな雨にもかかわらず、アナベルは元気だ。私は雨をものともせず濡れながらシャッターを切った。

苦い思い出がある。植えた覚えもないのに花壇にみごとなアナベルが咲いたことがあった。初めは緑色の花で、次に白になり、長い間咲いていた。花は大きく複数ついた。暑くなってもしばらく咲いていたが、とうとう枯れた。翌年もきれいな花が見られると思って楽しみにしていたが咲かなかった。

考えられる理由は、雑草と間違って抜いてしまったことだ。植物はしたたかだ。とくに雑草とよばれる草は強くて賢い。自分にそっくりな植物のそばで生きながらえようとするのだ。おそらくアナベルの周りに同じような葉の形をした雑草が生い茂り、誤って抜いてしまったのかもしれない。もうひとつ考えられることはラベンダーだ。アナベルはラベンダーの後ろの日陰に咲いた。ラベンダーは株を大きくし、成長いちじるしい時だった。植物が別の植物に負けるということがあるのなら、ラベンダーの勢いに負けたのかもしれない。

以来、そのアナベルは二度と咲かなかった。株がどれかもわからなかった。私は手入れが行き届かなかったことを悔やんだ。きっとその頃、何か別のことをしていたのだろう。おそらく小説を書いていたのだ。そういうことを始めると、私はいっさいのことを放棄してしまう。アナベルをどこかで見かけると、あの年に突如として花壇に咲いた大きく立派で美しい花を思いだす。もちろん写真は残っているが、見るにつけ悲しくなるので見ないようにしていた。ポーがアナベル・リーを愛したように、私はそのアナベルを愛していたのだ。それなのに大切にしてやれなかった悔いは大きい。

庭の植物との間には、さまざまな出会いと別れがある。くしくも昨年もらったアジサイはアナベルだった。いくつもの種類が咲き誇る中で、これをと友人が差し出したのだ。今度こそ植え替えを完璧にし、立派なアナベルに育ててやりたい。また雨がいちだんと烈しくなってきた。今夜も夜通し降るのだろうか。どこにも誰にも災害が起きませんように。

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