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2016年11月18日 (金)

メス猫(手術済み)が家出することの謎について No.1

小春が居なくなったのは今年の7月19日のこと。朝、起きるとガラス戸を開ける。必ず小春が待っている。2年前の寒い大晦日、病気だった妹のトラ美が突然に寝床から飛び出して出奔、二度と帰ることはなかった。それ以後、小春は庭でひとりにぼっちになった。ひとりになっても朝に私を待つ小春の姿があった。寂しかろうと可愛がってやろうとするが、生粋のノラは家の中へ入れるとパニックを起こし、狂ったように出口を探す。かと思えば私が知らぬ間に入っており、二階で眠っていたのか夕方に階段を降りてくることもあった。家の中には大いに興味があるが、人間の支配下には置かれるものか。それがノラの共通の認識のようだ。

居なくなった小春のことを説明するのに、まず彼女が属していた共同体について語らなければならない。トラ一族が隆盛を極めていた頃、小春とトラ美姉妹は家族制度を覚え、自分たちがどうするべきかを身につけた。犬と違って猫は皆、単独行動を取るので一匹が統制するのは難しいと思っていたが、この一族は違っていた。父親トラ吉を頂点に、母親トラ子、姉たちの小トラと小春、4匹のそれより幼いトラの姉妹と弟小太郎の8匹がピラミッドのような構成をつくっていた。更に家猫のダッコ、JJ、はるかちゃんと、その頃は計11匹も居た。

庭猫たちの統率者である父親トラ吉は殆んど庭におらず、母親とその娘・息子たちは、御飯の時間に、ある者は庭のどこからか起き出し、ある者は敷き地外のどこからか来て集合した。父親が食事に来た時、母親と2匹の姉たちは父親と幼い姉妹・弟が先に食べるのを後ろから見守った。第一陣が食べ終えると、おもむろに残りを食べはじめるという、一族のルールが出来ていた。

父親トラ吉はノラでありながらこの庭を制したがった。その為に最強だった黒猫のボスクロが退いた後、この庭を手に入れた。ボスクロの息子である若いJJをひどくいじめ、自身の息子である小太郎までも出て行けと言わんばかりにいじめて威嚇した。動物は大きくなってくると息子でもなんでもなくライバルのオスなのだ。トラ吉、JJ,小太郎の三匹の雄は、この庭をみな自分が治めたいと思っていた。その為、競ってオスたちは庭のあちこちにマーキングをした。当然、若者二匹は親分に叶わないので、親分が居ない時に目盗んでせっせと自分の匂いをフェンスや植物にも付けていた。そんな様子を他のメスたちは見ていた。オスは大変だなと思って見ていたかどうかは判らない。度々やっつけられる若いオスたちを可哀想にと思っていたかどうかも判らない。

そして何ヶ月かぶりに現れたボスのトラ吉が、頻死の一歩手前の状態で帰ってきた。トラ吉は2日間この庭で過ごしたあと、明け方に私に看取られながら逝った。一族のリーダーが逝ったのだ。それをどう知らせようかと考えた。皆が拝めるようにしようと芝生の上にシートを敷き、亡きがらを横たえた。何匹かの猫は近づいて匂いを嗅いだ。何匹かは遠目に見守った。どの猫も人間の様な悲しみの表情は見られなかった。でもきっと悲しんでいたのだろう。猫は悲しみを外に出さない。他の動物同様に、淡々と仲間の生死を受け止めて生きてゆくのだ。

                                         (続く)

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